東京バーベキュー ~歩くひと、佇むひと~

 
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at the boundary between two prefectures 01

金町関所は境界線ではなく、埼玉県側にあったのは東京都の公共施設だった。それで、さらに江戸川を上っていくことにする。なんにしろ、ゴールはすぐそばだ。

そういえば、東南アジアを旅行してたとき、ゴールデントライアングルまで自転車に乗って行ったことがあったなあ。ゴールデントライアングルはメコン川上流、タイとラオスとビルマ(ミャンマ)の3つの国が川を隔てて接する地帯で、かつてはアヘン栽培で有名だった。ニュースで耳にした人も多いはずだ。

僕は、タイ側の小さな村に宿を取っていた。そこは、観光客など来るわけのない小さな村で、かつての王朝の首都だったらしく、赤い土でつくったレンガの遺跡の上がそっくり村になっていた。村にお店は一軒しかなく、夕方6時の最終バスが出てしまうとその雑貨屋も閉まってしまう。惣菜と葉っぱにくるんだご飯とコーラが毎日、唯一の夕食で、店が閉まってしまうともう夕食にはありつけない。そんなときは、昼間にドリアン売りのおじさんから調達したドリアン(このドリアンは虫がつかないよう、また、匂いに悩まされないよう、宿の裏に天井からぶらさげておいた)を肴にメコンウィスキーをやって、早めに眠るしかなくなる。朝起きても何もやることがない村なので、宿のマスターから自転車を借りてあちこち走り回った。レンタル料金を尋ねたのだけど、その村にはレンタル料という概念は発達していないようで、結局、好きなときに自転車に乗って、好きなときに自転車を返す、そういうことになった。メコン川を上流まで行けるところまで走ってみようと思いついて、雑貨屋で紙ケース入りのミロと蒸留水とクロンティップというタイのタバコを買い込んでから、川沿いに走り出した。そこから2時間くらいで、ゴールデントライアングルに到着した。というか、到着して、やけに人が多いなと気づいて、地元の人に尋ねて、そこがゴールデントライアングルだということを知った。

僕が訪れた頃は、アジア通貨バブルがはじけるちょっと前で、そんな国境沿いの地帯までリゾート開発の波が押し寄せてきていた。ばかでかい、けど、ただ一人の宿泊客もいないホテルが建っていた。急にもよおしたときはそのホテルのトイレを利用した。ブーンという空調機械の音だけが響く屋上に無断で上がって、3つの国が混じり合う川の色を小一時間眺めて過ごした。それから眠たくなったので、無人のロビーに降りて、リノリウムの床がひやりとして気持ちよかったので、床に直接寝転がって昼寝した。ゴールデントライアングルはかつてアヘンの産地として有名だった。国際的にも問題になり、国境を接する国が共同で脱アヘンのための経済投資を行った。無人のリゾートホテルはその輝ける成果のひとつである。

町の観光の目玉は、メコン川からゴールデントライアングルを眺めること。町一番の観光施設はアヘン博物館という代物で、そこではアヘンと人類というテーマで、古代から人間がいかにアヘンと付き合ってきたかが展示されてる。土産物コーナーでは、さすがに実物は売っていないが、ケシの花や、ケシ栽培の様子を描いた絵はがきとか、吸引具のイミテーション(?)を売っていた。売り子のお姉さんに、本物は売ってないのと尋ねると、お姉さんはとても哀しそうな顔でアイムソーリーと答えた。博物館の出口には、タバコは西洋列強の権益で栄えたが、アヘンは西洋列強の陰謀でつぶされた、アヘンに正義をみたいなアジビラが置いてあった。博物館の外ではアジビラをプリントしたTシャツをどこかのおじさんが売っていた。さすがにそんなの着られない...

などと思いを巡らし、ぼけっとしてるその時、目に入ってきたのは次の光景。

at the boundary between two prefectures 02

彩の国さいたま ē∇ē.
ありゃ行き過ぎたorz...、というわけで、今来た土手をもどる。

boundary between two prefectures 04

めんどくさい看板が立ってる。
足下には銘版が打ち込まれていて、こう彫ってある。
銘版その1:三郷幸手 自転車道線 ◎ 埼玉県
銘版その2:←0.0km 4.7km→

わかったようで意味不明のメッセージだが、こっからこっちはオレのもの!こっち見んな!敵な強い意志だけは伝わってくる。恐るべし縦割り根性。

というわけで、ここが目指す目的地、埼玉と陽子湯の県境ということになる。
やったさ。

で、この県境、よく見ると意味不明の銘版以外にもいろいろ違いを発見できて面白い。

boundary between two prefectures 03

ガードレールが全く別物になっている。埼玉側は例の「彩の国さいたま ē∇ē」仕様の白いガードレール。対する東京都側は、そこいらへんで見かけるどこにでもある水色のメッシュ状のやつ。土手の雑草刈りの様子もだいぶ違っているようで、写真でも草の生え方の違いが一本の線になってくっきりわかる。こっからこっちはオレのもの!こっち見んな!、である。

東京都側、ポンプ場と県境の間はなにやら自然風の公園のつくりになっていて、これは正直、がっかりした。東京都側にも家並みが続いていてほしかった。それでこそ、正統かつ由緒正しい境界線の美学ではないかと思うのだ。境界線はいろいろなものが折り重なって、朝夕、平日と日曜、春夏秋冬、様々な断面を覗かせるから魅力的なのだ。管理されまくりの公共施設ではその醍醐味が失われてしまう。

そんなわけで、東京都側は後回しにして、埼玉県側の県境を歩いてみることにする。

boundary between two prefectures 05

向かって左側が東京都の自然風の公園。公園の前の道路は埼玉県三郷市。

boundary between two prefectures 06

どうにか畑の風景が残っていた。ビニールハウス、野積みされた枯れ草、放置されたホース、背後すぐそこに近づいてしまった住宅郡。

boundary between two prefectures 07

金網の柵で囲まれてしまった水路。
それでも、ここでは水路は確かに生きていた。
ようやくゴールに辿り着いた。
いや、正確には、ようやくスタート地点にたどり着いた、だ。
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Tag : 東金町 江戸川 
    06:31 | Top
 
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Check Point Kanamachi 02

江戸川を上がってきて、もうそろそろじゃないか、いい加減疲れてきたので引き返そうか、それにしてもバスもタクシーもつかまりそうもないし、どうしようか迷ってたら、突然風景が変わった。広い道路が斜め方向からぶつかっていて、河川敷で唐突に終了してる。周囲に不釣り合いな幅広の道路は、中央部だけアスファルトの色が違っている。おまけに立入禁止だ。やっと到着した...

観光旅行でベルリンに行ったことがある。夏のオンシーズンなので、急に旅行を決めた僕らはベルリン直行便は取れず、一度パリに入り、ワルシャワだかモスクワ行きの国際列車で移動するということになった。

当時のベルリンは東独に囲まれた城壁都市で、パリからベルリンに入るには、仏・西独・東独と3つの国を通り抜けていくことになる。ボーダーを超える箇所にくると車掌がパスポートコントロールの巡回を始めるのだけど、仏独間のそれはとても投げやりで、遠目から赤い色をちらっと見て、ああニッポンジンねと通り過ぎていってしまい、ずいぶんと緊張して待っていた僕らは拍子抜けした。旅行の記念になるからきちんとスタンプ押してくれとリクエストしたくらいだ。次は東独だ。時刻表を確認すると深夜2時くらいに東側に入ることになる。用心深い僕らはその時刻に目を覚まして用意していたのだけど、待てども待てども彼らはやってこない。これが社会主義かと小声でつぶやき、時間をつぶすために車窓のカーテンの隙間から外を覗いてみたら、赤錆色の夜景の中に何十台もの戦車が並んでた。やがて列車が止まり、何十分か経つと、東独の検査官が乗り込んできた。無愛想の固まりのような彼らにパスポートを渡し、出来合いの通過ヴィザ証をもらい、それから、ドルだかマルクだかフランだかを支払った。ここでは通過ヴィザ証は外貨獲得の堅実な商品なのだった。

馴染みになった出稼ぎトルコ人の屋台で毎日、ケバブを買って壁ぞいに町を歩いた。スパイの交換をやったという鉄の橋を眺めたり、中世のままの暮らしをしている村の麦畑の向こうに壁が屹立してるのを見つけ、壁まで歩いていった。村の主要交通手段である馬と何度もすれ違った。枢軸国の一員だった頃の日本大使館跡を見に行って、ヒットラーが焼討ちして廃墟になっている国会議事堂に行って、焼けこげた石段に座ってケバブを食べた。石段の裏はもう壁が迫っていて、銃を持って監視している東独兵士にケバブとコーラを見せびらかした。カメラを向けると東独兵士は壁の奥に隠れてしまった。日帰りで壁の向こう側に行けるとパリで買った雑誌のおまけみたいなガイドブックに書いてあったので行ってみた。チェックポイントチャーリーは長蛇の行列で、前に並んでるアメリカ人が2時間待ちだと僕らに教えてくれた。半日ほど東ベルリンを歩いて、またチェックポイントチャーリーを西側に歩いて帰ってきた。それから3ヶ月後、壁は壊れてしまう。

Check Point Kanamachi 01

冒頭の写真、向かって左に樹木が茂ってるところがある。その威嚇を土手から眺めたのがこれ。とても立派で由緒ありげな門、樹木は屋敷林。屋敷の建つ敷地はわずかだけど周囲より高くなっている、そういう微地形。面白いなと一周りしてから、斜め方向からぶつかってきて唐突に終了してる周囲に不釣り合いな幅広の道路と河川敷の境界部分に行ってみることにする。

Check Point Kanamachi 04

金町関所跡之碑。チェックポイントカナマチ。碑は平成15年に建てられた比較的新しいもので、隣には教育委員会の解説と江戸時代の図絵が掲げてあった。

Check Point Kanamachi 05
金町関所は、金町松戸関所と称され、水戸街道が江戸川を渡る地点に置かれた江戸の東の関門でした。関所の施設がある一帯は金町御番所町と呼ばれ、4名の関所番が明治2年(1869年)までその任に当たりました。対岸松戸宿との間には渡船が常備されていましたが、将軍が小金原に鹿狩りに出かける際には、江戸川に高瀬船を並べた仮設の船橋が架けられました。4度行われた鹿狩りのうち、最後の嘉永2年(1849年)の史料は、関所付近の様子を多く伝えています。その後、明治末期に行われた江戸川の改修により、御番所町の家並の一部は拡幅された堤防の下ととなり、江戸川の河身も大きく変貌しました。関所跡は、松戸宿との位置関係から、現堤防下の河川敷一帯と推定できます。

ということなので、実際に関所があったのはここではないみたいだ。

Check Point Kanamachi 03

こっちは冒頭の写真の向かって右側の先。こういうのを見るとカメラを向けてしまう習性は相変わらず。東金町ポンプ場とあり、東京都の管轄のようだ。ということは、ここは目的地ではなかったのか...。後から調べてみたら、屋敷林を持つ立派な屋敷は、金町関所役人だった矢島家の古い家なのだという。斜め方向からぶつかってきて唐突に終了してる周囲に不釣り合いな幅広の道路があって、その両サイドには、関所役人の屋敷とポンプ場が建っている。江戸の公共施設と平成の公共施設が立入禁止のアスファルトを挟んで建っているのだ。そして、立入禁止の黒いアスファルトは水路の跡に間違いない。ここは目的地ではなかったけど、それでも、探していた風景なのだった。

金町関所跡之碑が水路の墓碑銘に見えてしまったことは内緒にしておきたい。
    05:07 | Top
 
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view from Edogawa river 01

江戸川に出て、川上に向かって歩く。この辺りの土手は勾配がゆったりとしていて、そのせいか、歩いているオイラもまったり気味。春か秋のさわやかな日だったら、ゆったりとした土手の斜面に寝転がり、古いロックンロールでも聴いていたら気持ちいいだろうな。

金町駅前の再開発ビルがよく見える。まさにランドマークという言葉が相応しい。昔、世田谷区を歩いたときに、三件茶屋のキャロットタワーが区内のどこからでも見えてしまうという体験をして、複雑な気持ちになったのを思い出した。それまで、道が入り組んでいてちょっと歩くとどこにいるのか見失ってしまうというのが自分なりの世田谷のイメージだったし、その迷路っぽさを面白いと感じていたので、ランドマークのキャロットタワーは手品のネタばらしのように思えて、ちょっと不満だったのだ。

それはそれとして、ここから眺める葛飾はちょっと象徴的。金町駅前のマンションはとにかく高く伸びようとする。手前のマンションは横へ横へ伸びていく。どちらもコンクリートの固まりに変わりはない。共同化というのは土地代をどこまで薄めるかという純粋経済の関数であるし、都市計画もその関数にそってつくられているので当たり前なのだけど...

view from Edogawa river 02

ちなみに、旧水戸街道の歩道橋から同じく金町駅方向を撮ったのがこの写真。タワー型の超高層マンションがあって、周囲を一般的な板状のマンションが取り囲んで、ずっと離れていくと横長のそれに変わっていく。そういう島の周囲を無数の戸建てが海のごとく埋め尽くしていく。そういう風景。経済学も法律学もそういう風景を支持しているということ。

view from Edogawa river 03

これはさっきの歩道橋のすぐ近くで撮った『海』の写真。海といっても深い太平洋ではなく、マングローブの生えてるような気水域、遠浅で絶えず土砂が堆積し陸地化していくような海を想像させる。その海水のぬくさが心地よかったり。

view from Edogawa river 04

葛西神社(の裏側)。葛西という名前は江戸にとって興味深いものなので立ち寄る心算でいたのだけど、今日は目的地が出来てしまったので、また次の機会に。

view from Edogawa river 05

郊外でよく見かけるコンテナ倉庫。郊外ならどこでも見かける風景。たぶん、時代がつくった風景。コンビニエンスストアからカラオケボックスへ、カラオケボックスからコンテナ倉庫へというのが僕が思いつく時代がつくった『地の風景』ということになる。共同マンションになるわけでもなく、戸建て住宅になるわけでもなく、人ではなく諸々の荷物・所有物が共同化される。
Tag : 東金町 江戸川 
    00:19 | Top
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