東京バーベキュー ~歩くひと、佇むひと~

白鬚団地から見た隅田川沿いの町並み。
雲の陰に隠れるところと日が当たる場所の移ろいが面白くて、長い時間眺めてた。
青い橋は水神大橋、
手前は首都高向島線、
隅田川の向こうの白いマンションは千住曙町、
その奥にも首都高が見える。

ここからずっと眺めてた。
こんな廊下や通路やらが延々1.2km、端から端までつながっていると思うとぞくぞくしちゃう。
The tide is high but I'm holdin' on
I'm gonna be your number one
そんなかんじ。

住棟どうしをつなぐ部分。
こんな風に行き来できるようになってる。
これも、災害時の避難と消火活動のため。
ほんとう城塞だ。

こんな風に、直接、地上までつながっている。
緑の部分より赤い部分のほうがより不特定対数を扱う部分だったり、
積極的に炎や煙に立ち向かう攻撃的な部分だと感じていたのだけど、
なぜか緑色。
カラーリングにはもっと複雑なルールがあるのかもしれない。
白鬚東地区・防災設備廃止に反対、現地調査へ<災害対策特別委員会より>
ここで都の主張を確認してみましょう。 建設以来23年以上が経過し、発電機・設備などの更新時期を迎えるため「防災拠点高層時の理論的枠組みは変えない」ことを前提に、コスト削減をはかるため①ドレンチャー散水設備②ゲートの散水設備③避難広場を冷却する放水銃の散水設備を廃止したいとの意向。 理由は①周辺地域の不燃化もすすみ避難人口も当初10万人から4万人に減少したことと②年間の維持費は約6億円、設備更新の事業費は100億円以上かかるため。
いつの話なのか不明なのだけど、平成20年頃か?
白鬚東地区防災拠点に関する要望書
そうした中、東京都は平成15年以来、防災設備の一部廃止・縮小、さらには、防災センター用地での平常時における「消防訓練場」整備の計画を示しています。
こちらは平成20年とある。
そうか、もしかしたら、散水銃撃ちまくりの踊る大走査線ショーは、見られずじまいなのか...

北の端から歩いて、南端までやってきた。
最上階からよく見えたスカイツリーが地上からもよく見えた。
家に帰ってから、白鬚団地を訪れた人のレポートをしらみつぶしに読んでみた。一番の納得は「住宅都市整理公団」別棟のこれ。ちょっと涙出そうになった。
ぼくが惹かれるのは「現にいまそこにあることの素晴らしさ」とでもいうものなのでは、ということ。...ふつうの人にとっては街の風景は「現にいまそこにあるもの」であってそのオルタナティブが存在するだなんて思いもしないんじゃないかな。建築家にとって街の風景はパラレルワールドのひとつかもしれないけど、ぼくにはそうは見えない。

白鬚団地の南端。
栄えあるNo1のエンブレム。
The tide is high but I'm holdin' on.
I'm gonna be your number one.

モノトーンのコンクリート製の鳥居。
隅田川神社の文字の下には、注連縄(しめなわ)と紙垂(かみしで)。
注連縄は雷雲を、紙垂は稲妻の表象なのであって、だからこれは荒れ狂う世界そのもの。
その向こうには、トリコローレイタリアーノのファイアウォールが阿修羅像のごとく立ちはだかる。
ファイアウォールに空けられた荘厳なゲートひとつ。
ゲートから天空に向かって一筋の裂け目、まるで大空が裂けたみたいだ。
まさしくこれは神門に間違いない。
ここは神の通り道なのだ。
そして、ピクチャレスクの神門の向こうには安らかなる紅葉の世界が広がっている。
これは凄い、凄すぎるよ。
東京の防災公共事業の最高傑作であると断言しよう。

注連縄と紙垂の荒ぶる世界をくぐり抜け、神門を見上げる。
緑色。
神門の名は水神門という。

赤の空。
緑と赤の合体。

神門から一文字に伸びる天空の裂け目。
落下物防止の金網。

天空の裂け目の拡大写真。
水神が通り抜けると、ここに風が舞うのだろう。
神門を抜け、ピクチャレスクの中へと進む。

災難が襲ってきたとき、少しでも難を逃れるよう、燃えにくい木を使ったのだそうだ。
名実共に、白鬚の鎮守の森なんである。

七番の纏(まとい)。
これはもう防災の神殿だな。
何かの一大事には、ここに避難キャンプが設けられる。
雨風をしのぐテントが並び、非常食が配給される。
それはさながら白鬚の門前町であり、纏をかこうように市すら立つのではないか。
突然、雲が開き、日が射してきた。
虹がかかった。
オーバーザレインボウ、アンダーザリバー。

鎮守の先、隅田川神社が見えてくる。

拝殿。
首都高と堤防が隅田川を周到に隠している。
見てはいけないのだ。

隅田川神社を参拝した帰り道。
穏やかな晩秋の風景。
インディアンサマー。
参道の向こうはファイアウォール。

これも白鬚団地の一部。
道路脇に建つマンションのようなオフィスのような建物。
二つの建物をつなぐ渡り廊下が都合7層。
例によって緑色。

反対側に行ってみる。
これは鐘ケ淵の市街地側。
建物上部に電波塔らしきものあり。
建物は無窓、つうことは備蓄倉庫か、情報管理棟か。
そういうものがあって可笑しくはないけど、目下の興味は其処ではない。

緑色の渡り廊下は、大震災発生時にはズコンとシャッターが下りてくるっぽい。
で、そのまんま、ズコンと封鎖するのかと思いきや、どうも、地上部はそうでもなさげなんである。
ここ、シャッタ-がない。
道路のガードレールも貫通してる。
ってことは、非常災害時も、穴があきっぱなしなのかしらん。
水神大橋が完成したのは平成8(1996)年のことだから、
白鬚団地の一部を改造してこうなったんだと思われる。
それでいいのか?
漏れちゃうぞ。
火焔が吹き出でてしまうぞ。
鬼がすり抜けちゃうぞ。
謎である。
だれか、こうなっちゃった理由を教えてください。