荒川沿いの人工風景。【墨田区、江戸川区:八広〜平井】 | trackback(0) | comment(0) |
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《記憶》
埃っぽい道路の両脇に建つ木造住宅とアパートに小さな商店が入り交じる町を通り抜け荒川の土手に入ると、それまでの漠然とした風景が一変した。土手は、何かの拍子で風下にかかるとゴムがすえたような臭いで覆われていた。
土手の下は工場の町だった。荒川からは遠くの高さのある大きな工場まで見通せて、大きな工場の周りには中くらいの工場が点在しているのが見えた、そして周囲の地面を小さな町工場が覆っていた。どの工場をとっても2つとして同じ大きさ、同じ形の工場はなく、そのランダムな形が集合してつくる風景は不思議な統一感を醸し出していた。
ひとつひとつの工場に目をやるとどれも微妙に歪んだ形を持っている。立面がほぼ正確な正方形をしているにもかかわらず、ばっさり一片が欠けていたり、二等辺三角形の頂点をひしゃげた格好の装置が屋根に置かれていたりしていた。夕暮れ少し前、その微妙に歪んだフォルムにオレンジ色の陽の光がかかると、とても歪な形の影が長く長くのびていき、美術の教科書にのっていたジョルジュ・キリコの絵画を思い出すのだった。その頃にはもう臭いは気にならなくなっていた。
《荒川の土手を歩く》

荒川土手から眺める八広駅。久しぶりに見る八広駅はずいぶん変わってました。駅はバリアフリー対応だし、隣では公共駐輪場を整備してました。昔はもっと干からびてて、アジの干物みたいな駅だったです。でも、周囲の町並みは、びっくりするほど変わってない。
土手下の側道には居酒屋が張り付いていてよくわからない不思議な光景。その先の側道と立体交差する道の橋桁も古風でこういうのも昔のまま。これまで歩いた隅田川のカミソリ堤防とも親水テラスとも全然違う雰囲気です。雰囲気というか、川と人がとても近いし、よそよそしくない。

トタン・モダン。正面に見える2つはどちらも町工場。錆や煤だらけの外壁を白色かコンクリ打放しに、窓を白いスリガラスにし、室内灯のオフホワイトの光で満たしたら、立派なデザイナー建築に変身します。プロポーション的には、右の建物は学校、左はデザイナーズショップ兼オフィスですかね。
荒川放水路の景色。荒川の三方を橋が囲んでいて、川を四角く区画整理したような変な気持ちになります。左の橋は京成押上線、右が木根川橋、向こう正面の高架は首都高です。3年B組金八先生に出てくるのはこの辺の土手。

窓越しに向こう側の窓が透けて見え、建物の奥に外の空が透けて見えます。壁一枚のぺらぺら感覚もモダン。冗談でなく本気でいうのだけど、たまにカフェとかでこういう軽い感じ、見掛けます。雑居ビルの最上階がカフェになっていて、60年代風のソファと丸椅子とジュークボックスが並んでるというようなカフェ。場所が思い出せない...。
工場の最上部がスケルトンになってます。皮革工場なのでしょうか、乾燥させる必要からか、空気の流れを確保してるんだと思います。今はまったく感じないけど、昔、この土手を通っていた頃は鼻を突く臭いに悩まされました。WEBで調べたら、皮自体の臭いではなく、ナメシに使う薬品の臭いだったようです。スケルトンの奥に別の工場のスケルトンが重なって見えたりして、そこに夕日が差し込んだりすると、ちょっとうっとりします。

どういう理由でこんなことになってるのか不明。建物の色彩だけじゃなく、形態もバラバラ。全体を見渡しても建物の向きがとにかくバラバラ。幾何学模様のおもちゃをガラガラポンしてぶちまけたような奇妙な開放感があります。
キリコの絵画のような形而上学的な景色。直角でない曲がり角と、角を強調する建物。黄色い建設機材車と樹木の緑、赤い鳥居。業務用の朝と夕刻、日が傾いた時にのびる影が重なるともっとすごい。「街の神秘と憂鬱」を思い出しました。

土手ぎりぎりに建つ大きな鳥居。隅田川沿いには、川に接するように建つ神社が多いので、ここもそうした神社のひとつかと思い込んでました。でも、荒川の正式名称「荒川放水路」が示すように、大正〜昭和につくられた人工河川なんですよね。WEBで調べたら、もともと荒川掘削用地の中央部分に社殿が建っていたのを移転してこういうことになったらしいです。人工河川の中央から墨田区側に移り白髭神社と天満宮として、葛飾区側では木下川薬師としてまつられるようになったということらしいです。
ここまで歩いてくると住宅の割合が多くなってきますが、カメラにおさめてみると相変わらずいろんなものが見えてます。正面の煙突は清掃工場のもの。この煙突はどこにいても視界に入ってきます。

頭を傾けて上を見ると...、ビルの屋上に増築された小屋のなんともパーフェクトな開放感ったらもう。なんか、何もいうことはないです。 農村に行くとカントリーエレベータというのがあって、あれが大好きなわけです。これはカントリーエレベータではないけど、やっぱりこういうの見ると、自然とカメラが向いてしまう。タンクの上の鉄のフレームが竜の雄叫びみたい。

ここは旧中川の水門。荒川の向こう岸、ハーブ橋の下にも、水門が見えると思います。その水門の先が中川。昔、中川は向こう側の水門からこっちの水門に向かって流れてました。そこに荒川放水路という人工河川が掘られて、2つの河川がここで直行するという奇妙なことになったわけです。
だからやっぱり人工風景。
《気になったWEBSITE》
木根川の町の歴史については、これが詳しくてお勧め。このコンテンツに限らずサイトをつくってる八広の爺ちゃんは、60歳でパソコンを始め1年後にホームページをつくったのが2001年、以来、身の回りのことを片っ端からコンテンツにあげてるという凄い人。皮革については、これとこれが詳しい。どちらも地場のサイト。後者は、豚革材料の販売も行なっている。
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