東京バーベキュー ~歩くひと、佇むひと~

 
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21
 
 Keisei_Nippori

「ひゅーッ!、ジェットコースター、ゴーゴーッ!」
「どうしたんだよいきなり」
「この前さ、京成電車に乗ってさ。何年ぶりだろう、京成日暮里駅の改札口通ったのって」
「ついに頭いかれたかのかと心配したぞ。それで、京成電車がおまえの絶叫となんか関係あるのか?」
「いや、これがさ、凄いのよ。今の京成日暮里駅ってさ。昔の京成日暮里駅って、JRの隅っこを間借りしてますみたいな哀愁が漂ってたじゃん。それが今はさ、全然違うのよ」
「そうは云っても、ただの駅だろ」
「いやいや、まずね、一つの線路の両側にプラットホームがあるのよ。これ、人間ロケットの発射台みたい。その発射台の上のドーム屋根がなんか白い布で出来てるっぽい。そんなのが地上遥か上空に浮かんでるわけよ。これってさ、遊園地のジェットコースター乗り場、そのままじゃん」
「ふうん。で?」
「その日は青砥まで行く用事があったの。青砥って葛飾区だし、そんなに長い距離じゃないから、鈍行でよかったんだけどさ。せっかくジェットコースターに乗るんだから、最速のジェットコースターに乗りたいじゃん。それで、20分待ってわざわざ特急電車に乗った。おかげで遅刻しちゃった」
「阿呆かおまえは...」
「そんなことないぞ。現に、他のお客さんもほぼ全員、鈍行電車はやり過ごしてたぞ。やっぱり、みんな同じ気持ちなんだよ」
「違うわい」
「ようやく特急電車が見えてきたんで、『よっ!、待ってました大統領!、憎いねェ、このォ』ってね、合いの手入れてさ、『た~まやぁ~!』とか掛け声かけて特急電車を迎えるのよ。なかには、ウェーブまでするやつがいてさ、それは危険だから止めとけって説教しといた」
「そんなわけないだろ、いい加減なやつだな。それよか、何の話がしたいんだよ」
「ああ、そうそう。日暮里駅もそうなんなけど、それ以上に、京成から眺める車窓の景色が凄くてさ、まさにジェットコースターだった」

(車窓その1)
車窓その1

「なんだか、とりとめもない風景だね。どこに視線を合わせたらいいか迷うな」
「高層マンションが見えるんだけど、高層マンション以外は何となくの空き地だったりしてさ」

(車窓その2)
車窓その2

(車窓その3)
車窓その3

「どれも似たような景色だね。妙なスキマが印象的だ。マンションみたいな超高密度で人が住んでる場所と、スキマのバランスが独特なのかな。よーく見ると、スキマの正体が意味不明なでかい道路だったり、工場の敷地なのか、もうやめっちゃった工場の跡地なのか、微妙な感じだったりしてる。それに、一見スキマっぽくっても、実際には小さな戸立て住宅がびっしり埋まってるんだ」
「でしょ。あとこんなのも見えたぞ」

...というわけで、つづく。
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26
 
車窓その4

「コンニチワ、石丸謙二郎です。今日は英国はロンドンです」
「誰だよ、それ?」
「石丸謙二郎さん、知らないのか。『世界の車窓から』のナレーションやってる人だぞ」
「世界って...、これ、京成電車だろ!」
「電車は一路バーミンガムを目指します」
「違う違う。成田行き!」
「バールのようなものを持った客が暴れてます」
「嘘つくな!、訴えられるぞ」
「はい、嘘でした。でもさ、これ、妙に荒々しくてそういう雰囲気じゃないか」
「左に写ってる樹木の投げやりな雰囲気なんかがちょっと退廃的でさ。『ワイルド・サイドを歩け』(※1)って感じかな」
「コンニチワ、ルー・リード(※2)です。バーミンガムじゃなくてニューヨークです。今週はワイルドサイドを歩きます」
「もういいよそれは...」
「いや、この景色にはまっちゃってさ、週末になる度に京成電車に乗りに行ってる」
「鉄っちゃんでもないのに?」
「京成線って改造の真っ最中なのよ」
「それで?」
「最終的にはぜんぶ高架になるんだろうけど、まだ途中だからさ、高架は部分的ですぐ地上に戻っちゃう。で、またすぐに高架になって、それがまた尋常じゃない高いところだったりする。上下左右に激しくよじれながら、必死に窓から外を眺めると景色がこれなわけよ、もうたまらんッ」
「おまえの性癖はよくわからんな」
「いやいや、おまえも一度、乗ってみたらいいよ」
「遠慮しとく。でも、おまえの性癖は意味不明だが、云いたいことはわかったよ。京成沿線の風景が暴力的になり、沿線の町も暴力的になっていく。これが、おまえの云いたいことだろ」
「いや、そんなことは思ってないけど」
「幻想なんぞ持つんじゃない。終わりなき日常を生きろ!って、こうだろ」
「いや、思ってないって」
「暴動だー!、反乱だー!、革命だー!」
「だから、違うって」
「セックス、ドラッグ、ロケンロー!」
「おまえ、少し落ちつけ」
「シーセッ、ヒーベッ、テカウォコンザワイサイ、ドゥー・ドゥ・ドゥ・ドゥー・ドゥ・ドゥ...(※3)」
「歌うんじゃない!」
「なんだよ、ルー・リードから話を盛り上げようとしてるのに、つまらない奴だな。じゃあ、尾崎豊はどうだ。尾崎ハウス(※4)はすぐ近所だぞ。盗ぅすんだバァイクで走りぃ出す!」
「おまえの性癖こそ意味不明だ」
「だってさ、おまえ、この前、ブログに書いてたじゃないか。下町の境界に建ってた同潤会アパートが解体されて、そのまま下町も解体されていくのかと思ったら、そのひとつ外側にカオスがどうたらこうたら、ってさ(※5)。だから、そういうことを主張したいのかと」
「いや、たしかに書くのは書いたんだけど、暴力とか殺伐オンリーのイメージでもないのよ。それって、国道16号沿線をファストフードと大規模ショッピングセンターが食いつぶす、コンクリート・ジャングルがコミュニティを分断し、バイオレンスが跋扈する的な地域観だよな。なんかすげえチープな発想の気がする」
「ビンボー臭い、とか、犯罪恐い、だけじゃないと?」
「こらっ!、あからさまに書くんじゃねえ。おまえ、もう荒川のこっちに来れねえぞ。のこのこやってきたら、バールのようなものでくぁwせdrftgyふじこ...」
「やっぱり犯罪の臭いだ」
「いや、別にさ、バイオレンスと殺伐を全否定してるわけでもないのよ。まあ、そういう方向に行く可能性がないわけでもないし、実際そうなのかもしれない。足立・葛飾・江戸川ってさあ、荒川のさらに向こう側でさあ、世間的には芳しくないイメージが確立してるわけじゃん。以前、葛飾を歩いた時、『この風景じゃ、改造バイクでかっ飛びたくなるのも無理はない』みたいなこと、実際に思ったしさ。でもさあ...」
「全然わからん」
「思うに、スキマなのよ。実際、まちを歩いて視線に入ってくるのはスキマなの」
「スキマ?」
「うん。再開発が進んだり、高層マンションが乱立し始めてて、そういうところは凄い高密度なの。ところが、それ以外はスキマだらけ。古い住宅が取り壊されて空き地になってそのまま放っておかれるのが目立つ。公共事業で道路が出来たりするでしょ、あれ、昔だったらすぐに両サイドに建物が建っていって、だから、景観が破壊されるとかそういう議論になっていったんだよね。けれど、今の町を見てるとそうじゃない。でかい道路が出来て、それだけ。そのまんま、ぽかーんと視界に何も入ってこないままでさ、もしかしたら、この町じゃ、この先何十年も、スキマだらけの風景が続くんじゃないかとか思ってしまう。でさあ、東京の外周にそういう風景を持つ一帯が形成されつつあるのかもしれないと、変な言い方だけど、下町でも新下町でもない、かといってワイルドサイドでもない、まったく別個のアイデンティティを持つ地帯が出来つつあるんかもしれない。まあ、単なる想像でしかないんだけどね」
「何云ってるのかさっぱりわからないな」
「書いてるおいらも、さっぱりわからん。ある意味、風景のわからなさ加減・とりとめのなさ加減が、外の人からはワイルドサイドに見えちゃうのかもしれないけれど、実は今見えつつある風景は、まだ名前のついてない何かかもしれない。そんな風に思ったわけ」
「ふうむ」
「そんなわけでさ、これからしばらく葛飾を歩いてみようかと思ってるのよ」
「んっ、なんで葛飾?、写真に写ってるのは荒川の手前のはずだから、荒川区か足立区千住あたりだろ」
「えっとさ、京成乗って荒川超えた先には、まだ牧歌的な風景が残ってる。でも、細かく見ていくとすごく変化し始めている。あのスキマは変化の兆し?みたいなの。本当にとりとめのない風景なのか?、いやいや、そんなことねえそ、とか、歩いててそんなことばかり思ってる」
「おまえのしゃべりこそ、とりとめなさすぎ」
「それとさ、特急電車なんだよ。あれに乗らなきゃいけないんだ。でさ、特急電車だと日暮里の次は青砥なの。青砥は葛飾区だから、荒川区も足立区も通過しちゃうんだよ」
「なんじゃそれ」
「あの辺にも、いい呑み屋さん、たくさんあるぞ。立石なんて呑み屋の聖地と呼ばれてるんだぞ」
「結局、酒かいな...」
「説明聞いて余計わからなくなってきた。おまえ、こういう説明、下手だな。ブログ、代わりに書いてやろうか?」
「余計なお世話じゃ」

《ひとくちメモ》
※1:ルー・リードの持ち歌、退廃的御当地ソング
※2:ニューヨーク生まれの退廃的歌手
※3:正しくは、She says, hey babe, take a walk on the wild side, said, hey honey, take a walk on the wild side.
※4:1992年4月25日早朝、足立区千住河原町の民家の軒先に全裸で傷だらけで倒れていた尾崎豊を軒先の住人さんが発見した。自宅マンションに戻った尾崎だが、直後、日本医科大学付属病院で死亡。その民家は没後、一般に開放され、通称尾崎ハウスと呼ばれてた。2011年解体された。URL
※5:URL
Tag : 京成本線 
    08:17 | Top
 
27
 
青砥駅から眺める中川01

「京成線青砥駅のプラットホームからの眺めだね。これはいい」
「こんな風に激しく蛇行する川を見れる駅って、23区中探してもここだけなんじゃないかな」
「かもしれない」
「風景が広すぎて広角28mmに納まりきれてないや。カメラをずらすとどんな感じかな」

カメラを左にずらして撮影
 ↓
青砥駅から眺める中川02

「2枚を並べてみてよ」
「こうかい?」

2枚を並べる
 ↓
2枚を並べる

「ん?、何か変だな。真ん中が抜けてる」
「撮り忘れちゃった。今度行った時に撮り直すよ」
「ああ、でも雄大さはなんとなく伝わってくる。まるでドラゴンだな」
「アチョーっ!」
「なんだよ急に叫ぶんじゃない!」
「ドラゴンへの道だよ。ヌンチャク振り回すんだよ。間違って肘にぶつけちゃうと猛烈に痛いんだよ」
「無視することにした。でもさあ、道ってのはあながちハズレちゃいない。正確には『戸』だけどさ」
「なんだよ、『戸』って?」
「『戸』だよ『戸』。おまえ、現地歩いてるんだから、そのくらい調べておけよ」
「余計なお世話じゃ。で、『戸』ってのもカモベビラィマィファイヤ~って歌ったりするのか?」
「ドアーズ関係ないし...。『戸』ってのは、海や川と陸の出入り口ってこと」
「カミソリ堤防に秘密のドアでも開いてるのか?、それはどこでもドアなのか?」
「もういい...」
「ごめん、静かに聞くからさぁ」
「港とか船着き場とか、『戸』がつく場所にはそういうのが多いんだよ。昔は水運が重要だったから、ある意味、特別な名前なの。場合によっては軍事拠点だったりもする」
「青戸の対岸は奥戸だね。江戸川には松戸、隅田川には花川戸がある。つうか、東京自体が江戸だわ」
「川とか海を渡るっのって大変なのよ、中川みたいに蛇行してる川だと特にね。台風が来る度に流れが変わっちゃうし、川岸は、一年中、ぬかるみっぱなしで、泥と葦で満足に通行できない。だから、水辺と陸地の高低差がはっきりしてるところが交通の要所になったわけ」
「青戸と奥戸も舟で繋がってたのか?」
「かもしれない。実際、どうだったのかは今後の宿題かな」
「はっきりしてるところが『戸』ということなのか」
「はっきりというかくっきりというか、目鼻立ちがいい場所ってことかな」
「そういえば上戸彩も目鼻立ちがくっきりしてるな」
「それは関係ない」
「宍戸鍵もくっきりしてたっけか。おまえ、覚えて...ないよな」
「...」
「突然ですが、荒川区に荒川無し!」
「なんだよいきなり?」
「青戸に青戸駅無し!」
「はあ?」
「荒川区のへりを離れてるのは隅田川。でもって、葛飾区青戸にある駅は青砥駅。これ豆知識な」
「でも環七に架かってる橋は青砥橋だぜ」

橋を拡大
 ↓
青砥

「あれ、ほんとだ。名前決める時、問題にならなかったのかな?。おれたちの青戸を忘れるな!とか...」
「どうだろ?」
「Remember Aoto !」
「...」
「おれたちの青戸を返せ!」
「おまえ、そういうこと書いてて空しくないか」
「ちょっと空しい。でもさ、何度見てもこの中川の風景はいいな」
「葛飾の原風景だよな。京成線が高架になって始めてこういう風景を目にすることが出来たわけで、ある意味、原風景を時代が発見したわけだね」
「のんびり風呂につかりながら、ずっと眺めていたい気がする」
「いいね」
「うん、いい。一応お願いしとこうか。京成さん、青砥駅の屋上に露天風呂をつくって下さい」
「つくって下さい」
Tag : 青砥駅 中川 
    15:02 | Top
 
29
 
道路際に並ぶ謎の鉄扉

「これ、なーんだ?」
「宅配用牛乳の蔵出口。冷蔵庫の牛乳をここでバイクに積み換えるんだ」
「なんだよ、あっさり正解出しちゃってさ。面白くない奴だな、もっと盛り上げろよ」
「誰でもわかるだろ、昔はよく見かけたけどな」
「いや、俺はわからなかったぞ。何やら意味深だったんだよ。それで中を覗き込んじゃったぞ。けどさ、南京錠でしっかり鍵かけてあるんだよ」

固く閉ざされた鉄の扉

「そんなに面白いものか?」
「だってさあ、元々知ってるおまえにとっちゃ何てことないだろうけど、こんなのが道路に向かって幾つも並んでるんだぜ。バスーカ砲が隠してあって、敵の襲撃に備えてるのかと思った」
「なんだよ、敵って」
「扉もやたら厚みのある鉄製でさあ、その割には軽快に動きそうで、断熱材でも仕込んであるのかなとか思って。扉の上には赤いランプがついてて、スイッチ入れるとランプが光るんだよ。足下には水道の蛇口があって、これ、一仕事終えたらここで手を洗い、ホースで路面を流すんだなって、そこまで想像したらひらめいた。ああ、これは宅配用牛乳の蔵出口だ!」
「いや、だからそれ、もう答え出したから」
「だから、最初に正解書くなって云っただろ!。それで表のほうに回ったら牛乳の宅配センターだった」

牛乳の宅配用設備でした

「でも、今は使われてないのかな」
「うん。すぐ近くの空き地に配送用の自動車が並んでたんだけど、これじゃサイズが合わないからね」
「昭和の痕跡ってわけだ」
「牛乳は180ccのガラス瓶だな、まあテトラパックかもしれないけど。で、届いた先の家の玄関には牛乳入れる黄色い色した木の箱がかかってるんだ。配達のおじさんは明治牛乳のロゴの入った紺色の制服着てて、一仕事終えたおじさん、制服のポケットから煙草出して一服するんだ。煙草は間違いなくチェリーだな。そんな生活の断片の名残りだな」
「おまえ、かなり妄想入ってるだろ」
「いや、だからさあ、実際はどんな様子だったのか知りたくてさ、店の人に話を聞いてみたかったんだけど誰もいなくてさ、結局確かめられなかった」
「道路にも人は歩いてなかった?」
「うん。そこかしこ、しーんとしてた。斜向かいの中学校も閑散としてた」
「まちあるきしたのって日曜日だったんだろ。だったからしようがないな」
「そういえばさ、中学生くらいの年齢って、こういうのにやたら興味持つよな」
「かもしれない」
「衝動的に中を覗き込んだりするんだろうな」
「おまえはいい大人になってもやってるけどな」
「一言多いんだよおまえは。俺はね、少年の心を持っているの!」
「で?」
「いやさ、中学生に、鉄の扉、使わせたら面白いなと思ってさ。月に一度、鉄扉が何故だか開いてるんだよ。で、中学生は中を覗き込んじゃう。すると中には『大人からの挑戦状』が入ってるの」
「また変なこと言い出したな」
「そこには『アイドルをさがせ!』とか書いてあるのよ。今だったらAKBかな。それで、前田敦子の等身大フィギュアなんかをみんなが持ち寄るわけ」
「それでどうしろと?」
「鉄の扉、一列に並んでるじゃないか、ずらーっと。そこに、中学生だけじゃなく各世代の人もアイドルを持ち寄るのよ。それを鉄扉の奥に仕込んでおいて、一斉に扉をあけるわけ。御開帳!とか声かけてさ」
「おまえの話は長すぎるよ。で、結論は何なのよ?」
「きっと壮観だぜ。前田敦子の隣はモー娘。そのとなりは、うーん、スマップかな。で、ピンクレディ、キャンディーズ...。一番端っこの扉には、何が入ってるんだろう?。ジュリーかな、ミッキー・カーチスまで行けるかなぁ」
「日劇ウェスタン・カーニバルかよ!」
「『最先端の遊び!』だったら、中学生が持ってくるのはPSかDSだろうな、それが右端。反対側の左端はフラフープとかかな。ベーゴマはどの辺りにくるんだろ?。『秘密基地!』とか書いてあったら、わくわくするな」
「...」
「『時代の扉プロジェクト』とかでっち上げたら、どっかがお金出してくれないかな」
「今回は、長いわりに生産性のない話だったな」
「そうだ、思い出したぞ。おまえ、ポンって憶えてる?」
「ポン?」
「俺が子供の頃、牛乳ビンのフタを集めるのが流行ったんだ。厚紙でできた丸い形のフタでさ、そのフタを机の上に並べて、上から手のひらでポン!ってたたくんだよ。そうすると、空気の流れの関係で、フタがひっくり返る。ひっくり返ると相手のフタを貰うことができるのよ。あんまり流行りすぎて、ポン禁止令とか出たんだよな」
「子供の勝負の世界だな」
「鉄扉の向こう側にはたくさんの牛乳瓶のフタが眠っているんだろうな。もしかしたら年代物も残ってるっかも知れない。次に通ったとき、店の人に聞いてみよーっと。そうだ、今度さあ、ポン大会やらないか」
「...」
Tag : 細田 
    10:42 | Top
 
01
 
青戸の中川

「ありゃ、ゴミが溜っちゃってるわ。綺麗にしないと」
「ふっ、そう云うだろうと思った」
「なんだよ、『ふっ』てさ」
「これはそういう気持ちで撮ったんじゃないのよん」
「川を綺麗にしましょうって大切だと思うけどな」
「ふふっ、それでは次の一枚も見てもらおうかな」

中川七曲

「舟遊び?、この寒い時期に結構なことで」
「違うよ。舟、乗ってない。ここな、青砥駅のホームから眺めただろ、あそこだよ。遠くに見える橋が青砥橋。中川が龍みたいにのたうち回ってるので、中川七曲って云うんだよ。」
「ふうん」
「で、これはコンクリートの堤防のスキマから撮ったの。川の流れが急カーブすぎて、だから写真にすると、舟遊びの一枚に見えちゃう」
「なるほど。でも最初の一枚より、こっちの写真の方が綺麗だよ。なんで、あっちをトップに持ってったんだよ」
「ふふふっ、それでは次の一枚も見てもらおうかな」

中川への道

「これは中川に向かう道路かな。奥の方に小さく堤防が見えてる」
「他に何か気づかない?」
「庭の木が立派だ」
「いいとこ突いてるけど、それだけ?」
「今日は随分と思わせぶりだな」
「えーっとさ、堤防の手前が上り坂になってるでしょ。一緒に歩いた人が写ってる辺りより手前も、写真じゃわかりにくいけど、同じように坂になってた。それでさ、坂があれば上ってみるのが常道だろ。で、上がっていたと云うわけ」
「○○は高いところが好きの法則発動だ」
「おいおい、するってえと何かい?、同行した人達も○○ってか。失礼な奴だな。」
「そんなことより話を進めろよ」
「...。それでは次の一枚も見てもらおう、ふふふっ」

堤防の手前

「これは堤防のすぐ手前だね。日射しが強くて、丁寧に手入れされた木に落ちる陽がつくる陰影がまぶしい。敷地の縁の玉石積みは水際であることを思わせる」
「おまえなぁ、俺が云おうと思ってたのに!。そういう発言は現地を歩いた俺が担当のはずだぞ」
「まあ、いいじゃないの。でもさ、きっと古くからあるお宅なんだろうな。昔の庄屋さんかもしれない」
「それで、庭が広いのか。堤防沿いはそんな家が並んでた気がするな」
「中川って自然に元々ある川だよな、そんな川の川岸には自然堤防がある場合が多いんだよ」
「自然堤防?」
「上流から土やら何やら流れてくるだろ、で、それがこういうところに堆積していくわけ。七曲って呼ばれるくらい急なカーブ切ってるってことは、堆積する土砂も相当なもんだったはずだよ。川っぺりではあるけど、意外に安定した土地だったのかも知れない。江戸や明治の頃は水運が中心だから、庄屋さん的には、物流の管理もしやすかったのかもしれない」
「だろっ!。俺もそうに違いないと思ってたんだ。だから、最初の一枚なんだよ」
「急に得意げになったな。でも、葛飾の自然堤防に意外な緑が残ってるというのは面白い。そこだけ集中的に調べると何か発見できるかも知れない、まちづくりの種かもしれない」
「ふうん...」
「乗り気じゃないね」
「そりゃそうだよ。『調べる』とか『まちづくり』とかそういうのを持ち出されると、こいつ、最初から落としどころ決めてただろ、そうはいかねえぞべらぼうめ!って思っちゃうよ。そんなの、うさん臭すぎるだろ」
「確かにそうだな、すまんかった」
「さっきさ、おまえはゴミって云ったけど、確かに煙草の空箱とかリポビタンDのビンとかも流れ着いてるんだけどさ、やっぱ一番多いのは土砂であり木っ端なんだよ。俺はさ、それを見て、ああ中川だって思ったわけなのよ。だから、俺はこっちの写真が好きなんだ。今はさあ、堤防が出来ちゃって、川の内側と外側が無関係に思っちゃうけどさ、ところがどっこい、中川をなめんなよ!ってことだよな」
「たまにはいい事云うじゃないか。結局のところ、流れ着くモノに違いはあれども、漂着の場所という意味は普遍なのかもしれない」
「ふふっ、ふふふっ、ふふふふ」
「...」
Tag : 青戸 中川 
    14:27 | Top
 
07
 
細田中央通り商店街

「これ細田っていう町なんだけどさ、この風景、とりとめないだろ?」
「おまえさ、このシリースの最初から、その言葉、連呼してるよな。でも、こっちにはいまいち伝わってないんだけど...。『衰退してる』とか『統一感がない』とか『魅力がない』とかそういうこと?」
「いや、全然。そういう評価とは一切無関係のつもり」
「でも、わざわざ取り上げることもない、凡庸な風景にしか思えないんだけどな」
「うーんとな、まず前提として、これから葛飾ってこういう風景が増えてくるんだろうなって予想してる。そのことはすっと気になってたんだけど、どう気になるのかうまく言葉に出てこないままずっときてた。とうわけで、最近は、その『言葉が出てこない』ということ、それ自体にすごく関心が向かってるの。何云ってるか伝わってる?」
「いや全然...」
「言葉が見つからないことにかこつけて、語ることそのものを諦めてしまうみたいなさ、そんな空気を感じることがある。例えば、中心市街地の衰退とか町並みの欠如とかそういう紋切り型のフレーズで誤魔化してしまう。一方で、コミュニティの再生がどーたらこーたらという流行りの言説に飛びつくという状況もあるように思えるんだけど、それも信じられなくて、紋切り型フレーズの裏返しでしかないんじゃないか、とか。そんなわけで、言葉を紡ぎ出せないような風景に注目して歩いてみよう、みたいな方法にこだわってるのが今の俺かな」
「葛飾にこういう風景が増えてくるってことは、おまえ的にはこれが葛飾の最先端の風景なの?」
「町に住んでる人の話によると、バブルの影響とか無かったらしいんだよ。京成線の車窓からの風景って良くも悪くもバルブとその崩壊にがっつり影響されてるよね。だけど、ここ細田の町の場合、そうではない。だから、おまえの質問に答えるなら、周回遅れゆえに幸か不幸か最先端になっちゃたって感じなのかな」
「周回遅れの最先端?、わかったようなわからないような話だな。もっと具体的に話を進めたいんだけど...。えーっと、ここは『細田』っていう町名だよな、ってことは昔は田圃や畑だったのか?」
「うん、そうみたい。室町時代にはすでに開墾されてましたなんていう、とんでもなく古い言い伝えもあるらしい。で、今ある道路、元は田圃のあぜ道だったんじゃないかな。町割りもタテヨコタテヨコの見事なくらいの四角形。そのせいで、道がどこまでもまっすぐで、遠くまで見通せちゃうんだよ。最初の写真の場所は細田中央通り商店街っていうんだけど、ここも田圃の区割りのままなんだと思う」
「変に見通せちゃうからスカスカな印象なのか。表通りの割に両側の建物は背が低くて、だから余計にひなびた感を醸し出しちゃうんだろうな。裏道はどんな感じだった?」
細田で元気野菜つくってます
「田圃は見れなかったけど、畑は少しだけ残ってた。でも、駐車場のほうが目立つかな」
「他には?」
柑橘類の丘
「とにかく真っ平らな土地なんだけど、本当にところどころ、こういうのがあった。結構年代物の木が生えてて、だからこれって、一帯が田畑だらけの頃の遺物かなって思った。田圃の風景の中に一点、木々が生えてて、そこは少しだけ高い土地で農家が建ってる、そういう風景、よくあるよね。それを思った。あと、柑橘類の木があってさ、どういうわけだか葛飾の場合、その手の場所には必ず柑橘類の木があるんだ。何かのマーキングの役目だったのかな」
「それは面白いな。葛飾柑橘類マップみたいなのがあったら...、あるわけないか」
「それとな、おまえ、さっき裏道って云ったけど、この町に裏道って言葉は似合わないんだ。曲りくねった路地ってわけじゃなく、普通に車が往復できるくらいの道路が整然と通ってるわけで、だから、表通りと裏通りという区別は見た目では感じなかった」
「ふうん。表と裏の違いがない分、かえって全体が散漫になるのかもな。それも、おまえの云う『とりとめのなさ』の一因なのかな」
「それにしても不思議な町だよ、細田ってさ」
「こだわるねえ」
「最初、細田って云われても全然イメージわかなくてさ、それで歩く前、町の人に聞いてみたんだよ」
「どんな?」
「普通さ、どちらにお住まいですか?って尋ねられたら、町名を答えるよね。けどさ、よくよく考えたら、それって相手が町名を理解できるっていう暗黙の前提に立ってるんだよ。けれど、細田ってそうじゃないだろ。だから、どういう風に答えるのか興味あったのよ」
「どうだった?」
「大概、葛飾ですって答えて、そうすると、ああ柴又寅さんですかみたいなことになって、あとはだからケースバイケース、うやむやに終わることもしばしば、みたいなことらしい」
「鉄道が通ってなかったり、駅に町の名前がついてないとそうなるんだよ」
「でもさ、その場合も町の人が毎日使う駅って決まってるわけで、○○町の人はJR△△駅を使いますみたいなことだろ。ところが細田の場合、京成高砂・京成小岩・JR総武線小岩の3つが3つとも最寄り駅らしい」
「駅勢圏の中間というか、エアポケット的な場所なんだ」
「で、マンションやアパートなんかも○○○小岩みたいなネーミングで、そこでも細田って名前は登場しないらしい」
「マーケティング的な意味ではブランドになってないんだな」
「そんな気がする。マーケティングで思い出したんだけど、細田の町にはコンビニが1軒だか2軒だかしかないって云ってた。高砂や小岩の駅近くで済ましちゃうのかな?」
「そういうの、実際、見てきた?」
「いや、あんまし。1時間くらいしか歩いてないから。本当はその辺り、こだわって歩くべきだったかなと、ちょっと反省してる」
細田の集合住宅
「これは新しめの集合住宅だね。スキマだらけで贅沢な土地の使い方だなあ。右側に見える丸い段々がエントランスだな。随分と床が高いなあ」
「昔の水害の記憶が残ってるらしいんだ。新中川が出来てからはそんなに水害に敏感になる必要も無くなったんだけどね」
「記憶が残り続けるって事は、記憶を継承する古い地主さんが存在するってことだな。ああ、なるほど、最初におまえがバブルの洗礼を受けていないって云ってたじゃないか。その理由のひとつはきっとこれだよ」
「水害の記憶ってこと?」
「違う、違う。古くからの地主さんが広大な土地を持ってるってこと。そのおかげで、土地が商品として出回らず、流動化しなかったんだよ」
「云われてみれば、同じ名字の表札をそこかしこで見かけたなあ。それから、土盛について云えば、住宅だけじゃなく学校の校庭も土盛してたよ」
細田小学校の土盛
「右側の敷地が学校?。1m位かさ上げしてるみたいだな」
「でさあ、こうやって見てると、細田ってすごい特徴のある町だろ。とりとめなくても、まとまりのある風景なんだよ。それが細田の風景」
「そうみたいだ」
「でもさあ、新しく住む人にとってはさ、住む動機って、小岩や高砂の先っちょ程度のものかもしれないんだよ。アンケートとったわけじゃないから、俺の妄想かもしれないけどさ。不思議だと思わないか?」
「町の真ん中の商店街はこう云っちゃなんだが極度にまったり、コンビニすらない、駐車場ばかりが目立つ、住む人は別々の駅を利用する、アパートやマンションは隣町の名前を語る。ひとつひとつを取り上げると、パッとしないイメージになっちゃうけど...」
「でもさ、明らかに葛飾の他のどの町とも違う風景が存在してしまっているのよ。それは凄く面白いことだよ」
「ってことは、その風景を成立させてしまった根本は何かってことになるな。空間的にはエアポケット、経済的には地主さんの存在、この2つの理由で土地の流動化が起きず、結果、ある種の風景の構造が残り続けた。でもそれだけだと『葛飾の他のどの町とも違う風景』と言い切るには弱すぎると思うけどね。やっぱ、おまえの妄想なんじゃないか」
「実際、町を歩いた人の感覚を信じなさいよ。おまえは俺の話を信じて、いろいろ、こじつければいいの!」
「でもやっぱり、それだけの理由じゃ弱すぎるよ」
「...」

(長くなったので続く)
Tag : 細田 
    20:00 | Top
 
10
 
東用水せせらぎ通り

「これは?、歩行者用の専用道路?」
「『東用水せせらぎ通り』って云うんだ。昔、ここに農業用水が通ってて、そこを暗渠にしてこうなった。かれこれ10年くらい前のことみたい。この通りも、『細田中央通り商店街』に負けず劣らず、どこまでもまーっすぐに延びてるんだぜ」
「用水路だから『せせらぎ』ってわけか...」
「でも、地元の人の感覚は100%ドブ川って感じだった。50~60歳くらいの人、何人かに聞いてみたんだけど、ありゃドブだね、夏場は臭った、かなりくさかった、ザリガニなんていねえよ...、こんな話ばかりでさ。ちなみにザリガニ採りは高砂の怪無池まで行ってたらしい。怪無池は歩いたことあるんだけど、まったりしてていいところだよ。きっと当時の面影を残してるんだろうなぁ」
「今回は細田のまちあるきなんで、話題、戻していい?。地元の人のせせらぎ通りへの思い入れみたいなのはどうなの?」
「うーん、正直云ってわからない。たかだた1時間歩いただけなのに、そこまで詮索するのは失礼だしね。ただ個人的な印象で云うと思い入れ云々は感じなかったな。あまりに日常化してしまっているせいかもしれんけど」
「どういうこと?」
「さっき云ったように、昔の風景を知ってる人達は『臭いドブ』に蓋が架かってすっきりした、でしょ。そうそう、せせらぎ通りで小学生2人組に出会ってさ、いろいろ話し聞きながら町を歩いたのよ。でさぁ、『なあ、おまえら、ここで遊んだりする?』って聞いてみたのよ。」

細田小学校脇の市民農園?
 ↑
細田小学校の隣にある市民農園?、小学生に案内してもらった。ここを管理してるおじさんにも話を聞いた。

「そしたら?」
「なんか夏にはここで遊ぶらしい。写真にもちょっだけ写ってるけど、歩道脇に水が流れる風の仕掛けがあるのよ。温泉街の駅前とかに観光用の足湯があるじゃない、あれイメージしてもらえばいいけど。で、夏場の暑い盛り、1週間くらいかな、実際に水を流すらしいんだよ。その時はここにやってきて遊ぶんだ、みたいなこと云ってた。でもそれって、思い入れとはちょっと違うかも」
「でも、親しまれてるんだから、それでいいじゃないか」
「うん...でもなぁ...なんかなぁ...ああそうだ!。もうひとつ、『この道はどこまで続いてるの?』ってのも聞いてみた。そしたらさぁ『ずーっと!』って答えが応ってきて、でも俺も負けずに『でも終点はあるんだろ?』って言い返したら『あるっ!』って、がぜん話に乗ってきてさ。二人とも終点の話に熱くなってさ、手を引っ張って終点まで連れていこうとするのよ」
「なにそれ?、単に子供にウケましたってこと?」
「いや、なんかさ、おまえの云う『思い入れ』っていうのか?、それって俺なりに思うのはさ、『この道はどこまで続いてるの?』みたいな探究心と近いものではないかと思うんだ。せせらぎ通りってさ、明らかに変な道じゃないか。どう見たって普通の道路じゃない。道路の真ん中がピカピカツルツルのタイルで敷き詰められててさ、子供、特に男の子はそういう変なものが目の前にあったら探検したくなるのよ。この先はどうなってるんだろ?って思って歩き始めたりするわけさ」
「それでいいじゃん。小学生2人組もそうだったんだろ?」
「いやよくない。普通はさ、そんなに簡単に答えなんかでないんだよ、だって道路に終点なんて無いからさ。最初は気紛れで歩き始めたら、全然、終点が見つからなくて、そのうち日が暮れて、家に帰れなくなりそうで、泣きながら戻ってくる。次の日、早起きして、駄菓子屋で食べ物調達して、覚悟を決めて探検に出かける。そういう経験の残骸のことを『思い入れ』って云うんじゃないかと思うんだ」
「深い体験に至ることなく、あっさり終点が見つかっちゃうのが残念ってこと?」
「まあ、そうかもしれない。男の子の好奇心ってさあ、どこかにはみだしていくものに向かうものじゃないか。学校でも塾でも自分の住む町でも、そういう場所から、はみだしていく先に何か得体の知れない気配を感じてさ。せせらぎ通りも、そういう雰囲気があってもいいのかもしれない。別にさあ、ああいう風にきちんと整備されて無くてもいいと思うんだよ。終点があって終わりじゃなくてさ、その先に余韻があって、その余韻がなんか怪しいとかさ。なんつうかさ、今の感じだとRPGゲーム的に難易度が低すぎる気がする」
「でも、そういうのって安全面でクレーム来るんじゃないかな」
「だろうなあ...」

どんぐり拾った
 ↑
「どんぐり拾った」と自慢げに見せてくれる小学生。東用水せせらぎ通りにて

「ところで、町を何人くらいで歩いたんだい?」
「えっと、4~5人でグループになって、そのグループが2つ。片一方のグループは町の反対側まで行ったらしいんだけど、俺がいたグループは、何か見る度に立ち止まっちゃうせいか、ほんの少ししか歩けなかった」
「町の人、子供達のことは聞いたけど、まちあるきした人達は『せせらぎ通り』にはどんな感想持ったんだい?」
「歩行者専用道の脇が、ゴミ収集場になっててさ、そういうのに感心が集まってた。あと、ほんの少しだけど、鋪装されてない土がむき出しの部分があって、そこに野菜が植えてあるの誰かが見つけて、それも面白いって事になった。ああそうか、そういうのがRPG的に難易度に貢献すればいいのか」
「おまえは何に関心持ったんだい?」
「俺?、俺はポンプ室だな」
「ポンプ室?」
「さっき夏場に水を流すって云ったじゃない。その水を流すときの動力だよ。歩道に忽然と意味不明のオブジェが立ちはだかってて、何かそそられるなあって。俺が子供だったら間違いなく潜入したね。『あそこ、潜入したことある?』って聞いてみればよかったな」
「やっぱ、おまえ自身がクレームの対象だ!」
「...」
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13
 
江戸川縁領々地図

「細田の町を語った時、とりとめのなさの理由が弱すぎるって云ってたじゃないか」
「まあ...」
「たしか、『空間的にはエアポケット、経済的には地主さんの存在、この2つの理由で土地の流動化が起きず、結果、ある種の風景の構造が残り続けた、でもそれだけじゃない』とか、小難しげに講釈してたんだけど、あれ、ちゃんと説明してよ」
「...ああ...」
「何だよ、その乗り気の無さ加減は?」
「...じゃあ云うよ。おまえさあ、他人様の町を歩くなら、もうちょい謙虚になった方がいいんじゃないか?」
「通行人の邪魔にならない、大勢でつるまない、住宅の中まで覗かない、その辺は気をつけてるつもりだけど..。面白いもの見つけたりすると大声出しちゃうんで、それは反省してる。それから、町への感謝を込めて打上げはちゃんとその町の呑み屋でやってるぞ」
「いや、そういうのは大切なんだけどさぁ、なんて云うかな、もうちょい下調べしてから町に出た方がいいんじゃない?」
「...。何が気にさわってるんだよ?。まあ、細田の町で話を聞かせてくれたおじさんにも、そっくり同じこと云われたんだけどさ」
「だろ。ここまでの話を聞いてて、町の歴史みたいなことが全然出て来ないじゃないか。それが気になったんだよ。やっぱ、その辺は欠かせないよ」
「...。具体的に説明してよ」
「じゃあ、まずはこれ。冒頭の絵図は何だかわかる?」
「江戸時代だな。左は中川で右は江戸川だから、現代の葛飾区・江戸川区だね。画面真ん中に『細田』の文字が読める」
「薄い水色のラインは用水路だよ。小合溜から用水路が流れてる。上下之割用水だ。この用水路のおかげでこの辺りの農業用水が確保できた。いわば江戸食料安保の生命線だね」
「これは以前、歩いたことあるな。そのときは高砂から西側の用水路に沿って中川まで歩いたんだ」
「小合溜から流れだした用水路は新宿で小岩用水と分水する。さらに曲金・細田辺りで、東用水・中用水・西用水に分岐する。東側を流れる用水が、この前見てきた『東用水せせらぎ通り』に当たる」
「うん。東用水と西用水は実際に歩いたからわかる。中用水は?」
「西用水と中用水に2つに分かれる場所は今の細田橋あたりだね。中用水の進路は今の新中川と重なってるんだ。だから中用水は中川放水路の川底に沈んでしまったのさ」
「中川放水路も新金線もない時代の細田には、2本の平行する用水路が目立ったろうね。細田のランドマークだ」
「平行する2本の幹線用水路、その合間に広がる田圃。その風景って本当に想像できる?」
「たぶん。いや、念を押されると自信なくなってきた...」
「じゃあ、次の地図」
昭和22年新東京区分詳細図
「新金線は開通してるね。環七はもちろん、中川放水路もまだ出来ていない」
「昭和22年、太平洋戦争直後の葛飾区だよ。細田町について気づくことは?」
「あれっ、道路がごちゃごちゃだ。今と全然違う。まっすぐなのは東用水だけで、それ以外は見事にねうねしてる」
「当然、田圃もうねうねしてて、全然、四角形じゃない。gooのマップに当時の航空写真が載ってる」
「昔から当たり前のように整形だったのかと思ってた。東用水と新金線の直線に惑わされてた。完全に思い込みだ」
「だろ?、勉強してから町へ出ろって云ったのはそういうことなんだよ」
「区画が整形になったのはいつだろう?」
「じゃあ、3つ目の地図」
昭和35年都市計画図
「中川放水路が地図に登場してる。細田町は...整地されてる。今と同じ道路だわ」
「これは昭和35年の都市計画図だよ。中川放水路の通水式典は昭和38年だから、まだ水は流れてはいない。放水路の姿は見えてきたけど、まだ工事の最中で土ぼこりが立っていたんじゃないかな」
「ふうむ、整地されたのは昭和20年代から30年代にかけてのことなのか。意外と最近の風景なんだ。しかもとんでもなく人為的な風景だというのにびっくりだな。この薄い黄色は何を示してるの?」
「当時の都市計画で、赤は商業地域、濃い黄色は住居地域、薄い黄色は緑地地域だね」
「リョクチ?」
「うん、緑地地域。平ったく云えば、農業のための土地ですってこと。農家の人の自宅とか農業の仕事に関わる建物しか建てちゃいけない、薄い黄色はそういう意味だね。それも、今のスキマだらけの風景に繋がっているのかもしれない」
「それにしても、道路も田圃も町ごと直線になって、目の前では中川放水路の大工事の真っ最中、なんか騒がしい時代だな。その割には、都市計画的には依然として農業の場所のままだったんだな。別の意味で、とりとめないわ、これ」
「耕地整理があって中川放水路の大工事があって、町の風景は激変した。放水路通水の翌年には東京オリンピックが開催される。時代的には三丁目の夕日とそのまま重なるんだよ。そして、細田の町の姿の骨格であるはずの東用水は、町の風景が出来でくるのと平行して、皮肉にもドブ川でしかなくなっていく。これって、三丁目の夕日的な下町物語では知ることのできないトリビアな風景だと思いませんかタモリさん68へぇ」
「おまえ、突然ボケを入れるんじゃないよ、わかんねえよ。まあでも、今回は勉強になったナ」
「いま、まだ終わりじゃないよ。もうひとつ見せたいものがある」
「いや、見るのはいいけどさ...。今回のエントリ、長過ぎるよ。いい加減、飽きてきた」
「まあそういうな。もうちょっとだからさ。で、ちょっとこれを見てよ。隣町である新小岩の変遷を追ったページなんだけどさ」
「なんで新小岩が隣町なのよ?」
「ヒントは新金線。貨物専用線に客車を通して、細田に駅が出来るって噂、聞いたことない?」
「そういえばそんな噂があったって、町の人から聞いた。細田小学校のある場所が駅になるはずだったんだって云ってた」
「新金線は新小岩と金町を結んでる。だから、バーチャル細田駅から見たら、新小岩は隣町に当たる。という前提で、これを見てよ」
「見たけど。随分、綺麗な色使いだなあ。わかりやすくて、まちあるきの助けになる」
「でね、新小岩駅が出来る前の新小岩は細田と同じように、道路も田圃もぐにゃぐにゃの風景だったんだ。駅が出来て耕地整理やって、そうしたら昭和30年代に急激に発展していくわけよ。駅が出来たのは昭和3年、耕地整理はそれ以降。いずれも、細田の耕地整理より一時代遡る頃の話になる」
「細田の人も、新小岩みたいになることを期待してた?」
「それは人さまざまだろうね。町が発展することを期待する人もいれば、今のままでいいからそっとしておいてくれという人もいたに違いない。でも、隣町の耕地整理後の変化をリアルに見てた人にとって、駅が出来るかもという噂は、期待にしろ不安にしろ大きなインパクトを与えたんじゃないかな」
「でも、幸か不幸か、そうはならなかった... 」
「おまけに中川放水路が出来たために、新小岩はちょっと離れた町になってしまった。耕地整理、一変する風景、駅への期待...その辺の心情を思うと複雑だな」
「うん。本当にとりとめがなとしかいいようがない」
「そうだね。実にとりとめがない」
「...」
    22:49 | Top
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