東京バーベキュー ~歩くひと、佇むひと~

 
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 Motomachi_Park_1

御茶ノ水駅から東京医科歯科大で折れ、神田川沿い、順天堂大学の前を過ぎたあたり、駿河台の台地がはっきりと下り坂になるあたり、こんもりとした木々の下に、ヨーロッパ風のこてこてとした壁が見えてくる。台地の斜面、その壁に向かってのびる階段は、壁の前でふたつに分かれる。周囲を気にも留めず通りすぎるだけの人には、古びた洋館の廃墟と思っているかもしれない。そんな一角。

 Motomachi_Park_2

外堀通り、歩道から見えるのは、こんな風景。前面の印象は、ルネッサンスのようであり、帝国ホテルのライトのようでもある。たぶん、いろんな印象が頭をよぎるけど、そのどれもが廃墟趣味のごとし。

元町公園は、昭和5年、関東大震災の復興計画としてつくられた。復興計画では、ウォーターフロントの墨田公園、ビジネス街のホワイトカラー向けの浜町公園(ここは以前歩いた)、工場街の工員向けの錦糸公園が三大大規模公園として有名だけど、それより小振りの小公園、より町に密着した小公園が数多く計画されていた。元町公園はそのひとつ。そして、当時の形が少なからず残っているのは、ここだけらしい。隣接する小学校跡地と合わせ、再開発ビル建設の計画があったはずだが、どうなったのだろう。

 Motomachi_Park_4

入口の階段、壁の前で二つに分かれた先には、どちらの側にも、外堀通りに向かって張り出すように露檀が設けてある。神田川の眺望を明確に意識しているのが伝わってくる。

 Motomachi_Park_5

アーチ模様の壁。そこはかとなく死の臭いを感じてしまうのは、厳格な左右対称の壁の中央が、水の枯れた壁泉のせいに違いない。

 Motomachi_Park_8

壁泉。

 Motomachi_Park_3

二つに分かれた先の階段。階段には見事なつくりの水の流れ(カスケードというらしい)が設けられている。このカスケードも枯れている。

その裏側には、これまた見事な水飲み台。ここから湧いた水で手を洗い、のどを湿し、余った水は階段のカスケードへ零れていく...

 Motomachi_Park_6

ここを訪れたのは何年ぶりだろうか。以前はあったレトロな水飲み台が見当たらないのは、老朽化して壊されてしまったのかな。やたらとかっこいい滑り台とか、いくつか見てまわりたいところだけど、今日は疲れた。ベンチに座って、本を読み始める。いい加減暑いのだけど、それでも外堀通りのアスファルトとは段違いの涼しさ。8/15のお約束、街宣車の喧噪はもう聞こえてこない。地元の人がのんびり昼寝してる。

 Motomachi_Park_7

...『滝山コミューン一九七四』を読め読めとしつこく薦められたのは、数年前、友人と酒を飲みへべれけになったときのことだ。いろいろ町を歩いて、東京はどんどん変わっていくなあという話が、いつしか、地域コミュニティを操作するってのは結構やばいんじゃないのという話題に展開し、そこで『滝山コミューン一九七四』が出てきたのだった(はずだ)。

東京郊外の団地とそこに併設された小学校、その均質的な空間で、学級集団づくりというのが行なわれる。生徒は班に所属し、学校というコミュニティを舞台に、班が闘争し、全体が呼応し、次第に強い『力』を自覚したコミューンが形成される。そんな内容だと教えられた。この件ずっと忘れていたのだけど、最近、郊外ばかり歩いていたこともあり、ひょんなことで、そのことを思い出したのだ。東北大震災後のコミュニティ再建が気になっていたというのもあるかもしれない。

で、ググって見ると、この本、文庫化されていた。それで、今日は文庫版『滝山コミューン一九七四』を入手するというのが主な目的というわけ。で、本はあっさり入手できた。家に帰ってゆっくり読めばよいのだけど、学校・コミュニティ・地域、、、とキーワードを脳内に並べてみたら、ここ、元町公園のことを思い出したというわけ。

元町公園に話を戻そう...

帝都復興院は3つの大公園と52ヶ所の小公園がつくられた。大公園は東京府、小公園は東京市の施行になる。小公園の一番の特徴は、そのほとんどすべて、小学校に隣接してつくられたことだ。用地確保の容易さ、校庭と公園の併用という合理性、プラクティカルにはそのような理由から、このような案が採用されたのだろう。

完成した近代的な学校公園は、地域の中心に置かれ、庶民は朝起きると、歯ブラシとタオルを持って公園に向かい、水道とトイレを使って、パーゴラの下で憩った』のだという。町の『サロン』といったところだ。

で、常々、気になっていたのは、公園にあるパーゴラ。たしかにパーゴラなのだけど、大抵、地面から一団高くなっていて、公園全体から見渡せる場所にあったりする。これ、完全に舞台、ステージだよね。地域コミュニティらしきものを想定していたことは間違いないにしても、その舞台とは具体的に何だったのか、例えば都市計画の本を漁ってみてもいまいち判然としない。今で云うまちづくりや市民集会ではないだろう。一糸乱れぬラジオ体操?、まさか。『隣組』が制度化されたのは、昭和15年のこと、52の小公園から10年も後のことだ。

そういえば、滝山コミューンに登場する『班(Team)』というのも軍事用語だったはずだ。滝山コミューンだけでなく、まちづくりの場面でも班分けはよく登場する。大抵、『班』とは呼ばず、グループと呼んだりりする。

パーゴラの下のサロン、隣組、あるいは班、あるいは細胞。
コミューンとコミュニティって?
パーゴラ下のステージでは、誰が何を演説するのだろう?
街宣車の去った8/15の小公園、パーゴラ脇のベンチに座って、本を読みはじめた。
(本の感想は、いつか、ここに書くつもり。)

《追記》

このエントリを書いてから、公園開設当時の辺りの風景はどんな感じだったのだろうと、気になりだした。それで、いろいろググって見たら、以下のサイトに出合った。

逸見 享「本郷元町公園」: Clocks & Clouds
夜の街の明かりのシルエットと、画面を斜めに横切る坂道と神田川の石垣が黒々と背景にあり、その前に公園の階段を上る帽子をかぶった紳士とパーゴラの円柱が浮かび上がっている。あたりはかなり暗いはずだが、左手に薄ぼんやりと頼りなさげに街灯の明かりが点っている。公園の隅の柱には石が貼ってあり、モダンな様子がうかがえる。この薄暗い公園の階段を上る紳士の寂しさの漂う姿と川の向こうに見える街の明かりの輝きは、江戸や明治から完全に隔絶された昭和初期の都市生活風景を鮮やかに切り出して見せている。


江戸や明治から完全に隔絶された昭和初期の都市生活風景、、、僕自身、昭和初期の都市生活風景をうまく想像できないままでいるのだけど、これって、東京のいたるところに潜んでいるのかもしれない。東京を歩くとき大切な視点のように思いはじめてる。

《さらに追記》

Clocks & Clouds』って、どこかで目にしたワードだなあと、薄ぼんやり感じてたんだけど、あっ、以前トラバいただいたサイトではないか!。先の引用は、グーグル経由で見つけたんだけど、すごい偶然。ちょっとびっくり。
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