
暖かくなってきたので、そろそろ町歩きを再開しようと。で、今年はちょっと違う歩き方をしようかなと考えてるわけで、そんなことをつらつらと...
去年の町歩きはとんでもなく早足だった。そもそもが一年も時間をかければ、23区をくまなく廻れるだろうと、それでかなりの23区通になれるだろうという意図で始めたのだけど、それはとんでもない誤解だった。なにしろ一回の町歩きで区の端から端まで一気に歩き抜けるという歩き方だったので、結局、見たいものを足早に通り抜け、気になったことに入り込むことなく、とにかく気になったというタグ付けだけして保留状態にしておくという感じになってしまった。
基本、見たいもの、気になることがあるから町に出るのだけど、そういうものだけを数珠つなぎに見てもしようがない、というか、そんなことをいくら続けても所詮自分とは関わりのないことの連続でしかない。
もちろん、やってみて、こういう歩き方ではじめてわかることがある。
一つの区を駆け足で横断するような歩き方をすると、見たいもの、気になることの成り立ちがわかってくるのだ。たった一日でわかったというのは、その町に失礼だろう。だから、「きっかけが得られたつもりになれる」という言い方にしておこう。
最初に行ったのは王子の町だけど、ここはとにかく平澤かまぼこ店に興味があったわけだ。平澤かまぼこ店は駅の真ん前徒歩10秒に位置してて、朝から店を開けてて、立ち呑みができて、朝から立ち呑みの客でいっぱいになる。それで、町歩きのスターターをこの店に決めた。駅に集合して、待ち合わせに遅れて来る人もいるだろうから、定刻にさっさとお店に移動してしまう。ほろ酔い加減で町に出て、一日へとへとになって町を歩いた。王子の駅を中心に大きな円をイメージして、大きな円に沿って町を一周したというわけ。とてつもなく長い距離だったので、見たいものも飛ばし飛ばしになってしまったのだけど、後から気が付いたら、結果的に、平澤かまぼこ店という場が存在するとっておきの秘密に近付けていた(というつもりになれた)。
あそこは、円グラフのように町が出来ているのだ。円グラフは何色かに色分けされていて、色の種類ごとに町の成り立ちが異なっている。今はそうではないのかもしれないけど、住んでいる人の特徴も異なっていたはずだ。人の歩く道や斜面に残された樹木の帯やそういうなにもかもが、円グラフの隅から中心点に向かって延びている。その円グラフの中心点が王子駅で、平澤かまぼこ店もそこに存在してる。店主のおかみさんが円グラフの中心点のような人なのだ(これは一度でも店を訪れた人なら一発で理解できると思う)。朝から一日、平澤かまぼこ店で呑んでいると、いろんな人がかわるがわるやってきて、店主のおかみさんがいろんな人の相手をして、悩みを聞いたり、人生を語ったり、実務上の相談に乗ったりする。いろんな種類の人の流れがこの一点に向かって集まってきていて、いや人だけではない、人に乗って町の話題やら、町の景気やら、町の流行り廃りやら、とにかく雑多なものがこの一点に流れ込んでくるというわけだ。退屈なわけがない。魅力的にならないわけがない。
そんなことを町歩きした数日後に、ふと発見した。
荒川区は隅田川から直角方向に町筋が延びていて、筋の数だけ人が流れて、町の話題も町の景気も流行り廃りも筋を行き交いしてる。都電荒川線は、町筋を串刺しするように敷かれている。僕らは隅田川に沿って、気になる場所や見たい場所を巡ったのだけど、隅田川に向かう町筋と町筋を串刺しにする都電という大きな流れに身を任せた場所は、決して派手でなくともなにかしら不思議な魅力を放っていた。反対に、流れに逆らっていたり、流れに乗っかっていない場所はどこか哀しげな雰囲気を出していた。
台東、千住から浅草を歩いた後、浅草門から妖艶な炎が吹き出ているのを実感した。町のひとつひとつの景色を後から思い出し、炎の勢いや炎が土地土地の風で巻き込んだりうねったりくすぶったりするイメージと重ね合わせると、その場所がリアルなものに感じられた。
こういうのは、一日でとにかく見渡してしまうというちょっと乱暴な歩き方をして発見できたことなのだ。端から端までたどり着いて、全てを見渡した気になってみる。全てを見渡せたということではない、全てを見渡したつもりになれる、その「つもり」からはじめて、今一度、個々のひとつひとつに思いを寄せて、「つもり」をまた少し修正してみるというようなこと。「所詮自分とは関わりのないことの連続でしかない」町に出る作法みたいなもの、そのひとつがおぼろげに見えてきたのは、ちょっとほめてやりたい気分ではある。
けど、話はそこで終わらない。深川・門前仲町から砂町辺りまで行ってみたとき、その作法がてんで空回りしてることに気づいてしまった。その話は後日。
※ 写真は、葛飾区立石駅前。最近、立石に行ったのでその話もおいおい。
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写真は、東京ではなく、東京近郊の河川敷。たまたま通りかかった。土手に桜が植えられていて、この季節になると、水際に桜の帯がつづく景色に染まります。
で、河川敷の向こう側から撮ったのが下の写真。
ああこれだこれだ!と、突然思い出したわけで...。
これってのは、これのこと。
5月の初旬に、鯉のぼりがいっせいに立ち上がって、その鯉のつくる仮想平面が、土地の起伏を連想させるとか、もしもそんなことができたら、コンクリートの垂直の壁は積極的な意味を持ってくるに違いない。
あの頃は五月だったので鯉のぼりを思ったのだけど、桜だったんだ、と。王子は、桜の名所なので、そっちが真っ先に頭に浮かんで当然なのだけどね。何事も逆らわず、季節の流れに沿って歩くというのは大切なのだなあ。
というわけで、暖かくなってきたんで、またぞろ歩きはじめようかなと、春の日の桜をながめつつ思いました。
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